This is the Japanese version of this column.
おれの人生にもやっとひと様の役に立てそうな時が来て、何も無駄にしたくないしいっときも無駄に生きたくないと思う。
レシートを全部ポケットにとってる。ルーマニア語の単語をそれに書いてトイレの壁やコーヒーメーカーに貼り付けて覚えようとしているのだが、その前におれの住んでいる通りが約400mに渡って友達だらけになってしまった。
彼らは気がよくてチャーミング。ちょっとシャイ。若い連中にはかなりアニメファンがいる。
おれの通訳をしてくれてる子が言っていた。日本に留学に行った時、寂しくて道で泣いてしまったことがあるらしい。一人で海外に行った時、そういうのは結構普通の感覚なんだろうか。
幸いにしておれはそこまで孤独を感じたことはない。どちらかと言うといつもやることがてんこ盛りすぎてそれどころではない。振り返るよりも先のことを考えるのに忙しい。
おれが今一番心配なのは健康だ。東京付近に住む友達が結構甲状腺にのう胞を抱えていることが分かった。福島事故との関連性は不明だが、もしかしたらおれにもあるかも知れない。
自分の甲状腺が一体どこにあるのかすら分からない。知りたくもない。シャワーを浴びるたびに自分でチェックしようとするが、考えると吐きそうになる。これがただのパラノイドであることを祈るしかない。
正直、長く病気で苦しむよりもパッと氏にたいという感じだ。
”疲れてないの”とよく聞かれる。基本的に仕事はずっと座っているだけなので肉体的に疲れることはありえない。今はむしろ人に急かされるよりも自分で自分を駆っている感じがしている。
おれ以外にも日本を出た日本人の人はたくさんいる。彼らはおれがなんとかうまくやっていることに喜んでくれる。愚かにも嫉妬されないことは幸運だと思う。
おれらは日本を出たことで”臆病者”などと呼ばれることがある。実際臆病だったら東欧で一人でこんなこと出来ないと思う。日本を出た本当のところも、ただ単純に放射能が恐かったからではない。無駄に死にたくなかったからだ。嘘つきどものために死にたくなかった。短く言うとそういうことだ。
まだ。少なくともひと様のために何かできる。おれは今世界で一番幸せな男かもしれない。
Iori Mochizuki